介護職を探していると「ユニット型特養はきつい」と聞いたことがあるかもしれません。なぜきついのか、実際はどうなのかしっかり理解しておけばミスマッチは防げます。
本記事では、ユニット型特養がきついと言われる具体的な理由や仕事内容を紹介します。人員配置基準やメリットまで、介護転職を検討している方向けにわかりやすく解説します。
ユニット型特養は大変な部分もありますが、やりがいを感じて長く続けている人も多い職場です。メリットとデメリットの両方を知って、自分に合ったキャリアを選びましょう。
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ユニット型特養がきついと言われる5つの理由
ユニット型特別養護老人ホーム(特養)とは、入所者を10人程度の小グループ(ユニット)に分け、家庭的な雰囲気の中でケアをおこなう施設です。個別ケアを重視するのは特徴ですが、きついと感じる人も少なくありません。
ここでは、きついと言われる代表的な理由を5つ紹介します。
- 担当人数が多い
- シフトが回りにくい
- 仕事を教わりにくい
- 入所者と職員の距離感が近い
- 入所者の要介護度が重い
担当人数が多い
ユニット型特養では、1ユニット9〜10人の入所者を2〜3人の職員で担当しますが、入浴や休憩で人手が減ると、実質的に1人で5人以上をみる場合もあります。担当制のため全員の情報を把握し、排泄や誘導も個別対応が必要です。夜勤はさらに負担が増し、複数ユニットを1人で対応する場合もあり、コールや排泄介助をすべて任されるため、大変さを感じやすいのが現実です。
マンツーマンで寄り添うといった魅力が、一人で何人も背負う大変さに直結する側面があります。少人数での密なケアはやりがいも大きいですが、職員の体力や精神力への負担をしっかり意識して働く必要があります。
シフトが回りにくい
ユニットごとに職員が固定されるため、急な休みが出ると他ユニットからの応援が難しく、シフト調整が大変です。従来型特養のように全員でカバーする柔軟さがなく、欠勤や早退が出ると「回らない」といった不安が強まります。
人員がギリギリだと休み希望も出しづらく、職員同士で「休めない」と遠慮し合う雰囲気が生まれ、ストレスや離職の原因にもなります。職員間の協力やコミュニケーションを深め、無理のないシフト調整ができる体制づくりが大切です。
仕事を教わりにくい
ユニット型特養は、ユニットごとに独立して動くため、新人教育もユニット内で完結する傾向にあります。結果として、以下の状況が生じがちです。
- 先輩の教え方がバラバラ
- 人によってやり方が違う
- 相談したくても他ユニットの人は自分の仕事で手一杯
新人職員からは、聞きづらいし質問したいのに忙しそうで声をかけられないといった声も良く聞かれます。現場では、本当はもっと教えたいのに余裕がないといったジレンマを抱える先輩職員も多いのが現実です。教育体制を整え、教えやすい・聞きやすい職場風土を作る工夫が現場の課題です。

入所者と職員の距離感が近い
ユニット型特養では家庭的な空間作りを重視し、少人数で同じリビングを過ごしながら生活全般を支援します。入所者との距離が近く、安心感や信頼関係を築ける一方、感情や要望を常に受け止めるため職員側の負担も大きいです。
逃げ場がなく「ずっと一対一の緊張感が続く」と感じる人も少なくありません。認知症による暴言や介護拒否、徘徊対応を一人で抱えやすく、相談しにくい環境が孤立感や精神的負担を増す要因です。信頼を築くやりがいを感じつつも、負担を分かち合えるチーム作りが重要です。
入所者の要介護度が重い
ユニット型特養では要介護3以上の入所者が多く、以下のような身体的負担が大きい介助をおこないます。
- 排泄介助
- 移乗
- 食事介助
- 認知症対応 など
理念として個別ケアを重視するため、一斉対応が難しく、一人ひとりに合わせた支援には時間と手間がかかります。認知症の進行による暴言や介護拒否、褥瘡予防、嚥下リスク管理など専門的な対応も求められます。重度の要介護者を少人数で支える仕組みは魅力でもありますが、職員の大きな負担要因です。

ユニット型特養は実際にきつい?仕事内容を紹介
ユニット型特養では、少人数の入所者を担当制でケアするため、一人ひとりの生活に深く関わる仕事が求められます。ここでは以下のような代表的な業務を挙げ、それぞれについて詳しく解説します。
- 身体介護
- 食事の提供と介助
- レクリエーション
- 健康チェック
身体介護
ユニット型特養の身体介護は以下のとおりです。
- 入浴介助
- 排泄介助
- 移乗介助
- 着替えの介助
- 口腔ケアの介助 など
少人数担当制のため、一人ひとりのペースや体調、希望に合わせた細やかな対応が必要です。効率重視の流れ作業ではなく、その人らしい生活を大切にするため、認知症による拒否や羞恥心への配慮、声かけの工夫も大切です。移乗や体位変換などではボディメカニクスを活かし、安全で負担の少ない介助を意識します。
こうした個別対応の積み重ねが、やりがいにもつながります。入所者の尊厳を守りつつ安全に介助するには、知識や技術だけでなく、相手を思いやる気持ちが不可欠です。
食事の提供と介助
ユニット型特養ではリビングで少人数が食卓を囲む家庭的な雰囲気の中で食事をします。職員は配膳や下膳、介助をおこないながら、誤嚥を防ぐペース管理や嚥下機能への配慮をしなければなりません。食欲が落ちた入所者への声かけや、食事形態の調整を看護師や栄養士と相談するなど、きめ細かい連携も重要です。
食事は単なる栄養補給ではなく、入所者にとって大切な楽しみの時間です。安心して美味しく食べられるように雰囲気作りやコミュニケーションも大事な仕事と言えます。入所者の小さな変化を見逃さず、食べる喜びを支える姿勢が求められる大切なケアです。

レクリエーション
ユニット型特養では、10人前後の少人数でレクリエーションをおこないます。ホールでの大人数レクと違い、以下のような入所者の好みや能力に合わせて個別対応します。
- 塗り絵
- 体操
- コミュニケーション
- 季節イベント など
みんなで一斉にやる場合もありますが、個別支援が中心となり楽しみを通じて心身の活性化を支援します。職員のアイデア次第で笑顔や意欲を引き出せる場合も多く、日々の生活にハリを与える重要な役割です。入所者との距離が近い分、喜びもダイレクトに感じられます。
楽しい時間を一緒に作ることで、信頼関係を深め、その人らしい生活を支える役割も果たします。
健康チェック
ユニット型特養ではバイタル測定だけでなく、日常の小さな変化の観察が非常に大切です。血圧や体温を測るだけでなく、以下の情報をキャッチしましょう。
- 表情
- 食欲
- 口数
- 排泄の様子 など
いつもより違うと感じた場合は、看護師や医師に報告します。認知症の方は痛みを訴えられない場合も多いため、声かけや動作から状態を読み取る力も必要です。日常的な観察は責任が大きいですが、入所者の命を守る大きなポイントになります。
小さな変化に気づける関係づくりと、的確な報告・連携が介護職の重要な役割です。
家族への連絡
ユニット型特養では担当職員が家族への連絡窓口を担当するケースが多く、信頼構築が重要です。
- 夜眠れない日が増えた
- 食事が進むようになった
このような入所者の日々の様子を具体的に伝え、不安や要望を受け止めます。認知症や看取り期に入ると家族の心配も大きく、ていねいな説明と寄り添う姿勢が欠かせません。クレーム対応も含め、家族とのパートナー関係を築き、入所者を一緒に支える立場として調整力やコミュニケーション力が求められる仕事です。
家族との信頼関係を築くことが、入所者本人の安心と穏やかな暮らしを支える土台になります。
ユニット型特養における1日のスケジュール例
ユニット型特養では、日勤と夜勤の交代勤務になっています。それぞれの特徴を詳しく解説します。
ユニット型特養の日勤の場合
日勤のスケジュール例は以下のとおりです。
9:00 | 始業。夜勤からの申し送りと引き継ぎ |
9:30 | 入浴介助 |
11:30 | 昼食の配膳 |
12:00 | 昼食の介助や見守り |
13:00 | 休憩 |
14:00 | レクリエーション |
15:00 | おやつの配膳。介助や見守り |
16:00 | 利用者とのコミュニケーション |
17:00 | 夕食の配膳 |
17:30 | 夕食の介助や見守り |
17:45 | 夜勤への申し送りと引き継ぎ |
18:00 | 終業 |
参考:レバウェル介護「特養の仕事内容は?施設の特徴や一日のスケジュール、夜勤業務も解説」
少人数担当制なので移動は少ないものの、一人ひとりへの細やかな対応が多く、責任も大きい仕事です。
ユニット型特養の夜勤の場合
夜勤の主なスケジュール例は以下のとおりです。
17:30 | 始業。日勤からの申し送りと引き継ぎ |
18:00 | 夕食の後片づけ |
19:00 | 就寝介助 |
20:00~4:00 | 夜間の見回り |
23:00~1:00 | 職員は順番に休憩 |
6:00 | 起床介助 |
7:30 | 朝食の準備や配膳 |
7:45 | 朝食介助 |
9:00 | 日勤への申し送りと引き継ぎ |
9:30 | 終業 |
参考:レバウェル介護「特養の仕事内容は?施設の特徴や一日のスケジュール、夜勤業務も解説」
夜間は入所者の眠りを守りつつ、排泄対応や体調急変への備えが求められます。

ユニット型特養の人員配置基準
ユニット型特養で働くには、どのくらいの人数で何人をケアするのかといった人員配置も大切なポイントです。人員配置基準を知れば、負担感やチーム体制を具体的にイメージできます。ここからは昼間・夜間・ユニットごとの基準を解説します。
ユニット型特養の日勤の基準
昼間の場合、介護職員または看護職員が以下の人員基準を満たす必要があります。
- 入所者の数が3人またはその端数を増すごとに1人以上必要
- 1ユニットごとに常時1人以上が必要
- ユニットごとに常勤のユニットリーダーを配置
しかし現場では、1ユニットに2〜3人の職員で9〜10人の入所者を担当するケースが多く、入浴介助や休憩で人が抜ける時間帯は、実質1人で5人以上を介護する状況も珍しくありません。
同じユニット内で長く関わると入所者との信頼関係は築きやすいですが、負担は職員に集中しやすく人が休むとシフトが回らないといった課題も残っています。小規模施設では余剰人員を抱えにくく、急な欠勤や長期休暇への対応が難しい点も大きなストレス要因です。
参考:厚生労働省「介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)」
ユニット型特養の夜勤の基準
夜間の場合、介護職員または看護職員が以下の人員基準を満たす必要があります。
- 入所者の数が3人またはその端数を増すごとに1人以上必要
- 2ユニットごとに1人以上が必要
- ユニットごとに常勤のユニットリーダーを配置
夜間は入所者の睡眠を守るための静かな時間は多いですが、コール対応や排泄介助、認知症による徘徊や興奮など突発的な状況も発生します。看護師が不在の時間帯では体調急変時の初動対応や救急搬送判断を介護職員が担う場合もあり、判断力と冷静さが求められます。
深夜帯には職員間で交代しながら仮眠をとる施設もあるものの、完全に休めない緊張感が続くのも特徴です。夜勤は精神的・身体的負担が大きく、人手不足を加速させる要因のひとつとも言われています。
参考:厚生労働省「介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)」
ユニットごとの基準
ユニット型特養は1ユニットあたり9〜10人程度の入所者を、担当職員が固定でケアする少人数制が基本です。家庭的な雰囲気を大切にしたり、個別性の高いケアを提供したりといった理念を実現しやすく、入所者との関係性を深めやすいメリットがあります。
一方で固定配置のため、ユニットの職員が休むと代わりがいなくなり、ほかのユニットからヘルプを呼びにくいといった課題も大きいです。教育面でも、ユニットごとの文化ややり方がばらつきやすく、新人教育が統一されにくい問題があります。
参考:厚生労働省「介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)」
ユニット型特養はきついだけじゃない!働く3つのメリット
大変な点ばかり語られがちなユニット型特養ですが、実は働く魅力もたくさんあります。入所者との距離が近いからこそ得られるやりがいや、成長できるポイントを3つのメリットに分けて紹介します。
入所者との関係が近くなる
ユニット型特養は1ユニット9〜10人程度の少人数を担当する固定配置が基本です。同じ入所者を継続してケアすると「Aさんは朝の不安が強い」「この声かけだと安心する」など、細かい性格や生活習慣を理解できます。
認知症が進んだ方でも、慣れた職員には心を開きやすく、介護拒否が減るケースもみられます。顔なじみの関係性こそ、ユニットケアの大きな魅力です。ケアする側も入所者の変化を見守り、一緒に笑ったり泣いたりしながらその人らしい生活が支えられる喜びを感じられます。
個別のケアがしやすい
ユニット型特養の特徴は、一斉介助ではなく一人ひとりに合わせた個別ケアを重視できる点です。排泄のタイミングや方法、食事のペース、嚥下状態など、全員同じやり方ではなく一人ひとりのニーズに応じて対応を変えられます。
大人数を同時に回す従来型特養では難しい柔軟な対応がしやすく、職員の提案がそのままケアの質に反映されるのも魅力です。時間はかかりますが、自分のケアで入所者の生活が良くなるといった手応えをダイレクトに感じられて、大きなやりがいにつながります。

幅広い介護スキルが身につく
ユニット型特養では少人数のチームで担当制をとるため、一人の職員が担う業務範囲はとても広いです。
- 身体介護
- 生活支援
- レクリエーションの企画運営
- 健康チェック
- 家族との連絡や説明 など
固定メンバーで入所者を長く担当するので、状態変化をキャッチして医療職に伝えることや、家族に状況を説明して安心してもらうといったコミュニケーション力や報告力も養われます。将来的にフロアリーダーやケアマネージャーを目指すうえで、非常に有益な経験が積める職場です。
関連記事:介護職の魅力について解説した記事はこちら
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「ユニット型特養がきつい」ことに関するQ&A
ユニット型特養が向いている人は?
ユニット型特養は、入所者一人ひとりと深く関わりたい、家庭的な雰囲気の中でじっくり寄り添うケアがしたい人に向いています。同じ入所者を長く担当するので「昨日との違い」「小さな変化」を捉えて支援できる観察力や、認知症の方とも信頼関係を築けるコミュニケーション力が求められます。

ユニット型特養は何がきつい?
ユニット型特養のきつい理由は、少人数固定制による負担の偏りや、人手不足時のシフトの融通が利きにくいと言えます。夜勤では2ユニットを1人で担当する場合も多く、コール対応や排泄介助、急変時の初動対応など責任も大きいです。入所者の要介護度が高いため、身体的な介護負担に加え、精神的なストレスも大きくなりやすい職場です。
ユニット型特養の夜勤に休憩はある?
多くのユニット型特養では夜勤中に交代で仮眠をとったり休憩時間を設けたりしています。ただし、少人数体制での対応になるため、コール対応や定期巡回、排泄介助などは夜間も必須です。状況によっては休憩時間が十分とれない場合もあります。認知症による徘徊や興奮、急変時の対応など、夜間も気を抜けない緊張感が続く点は理解しておきましょう。
ユニット型特養はきつい面だけでなくメリットもある!自分に合った施設で働こう
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