介護の仕事は、人の生命と尊厳に深く関わる非常に重要な職業です。日々、利用者の生活を支え、質の高いケアの提供が求められます。
しかし、どんなに経験豊富な介護職でも、失敗をしてしまう場合があります。大切なのは、失敗を単なるミスで終わらせず学びに変えていく姿勢です。
本記事では、介護職として働いていた筆者が、実際にあった介護職の失敗エピソードを紹介します。具体的に、失敗から得られる貴重な学びをご紹介。
これから介護職に就こうとしている方も、すでに現場で働いている方も、記事を通じて新たな気づきと成長のヒントを得ていただければ幸いです。
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介護職の失敗エピソード|事故編
介護職には、利用者を直接介助する仕事が多く含まれ、失敗が命に関わる事故につながる場合もあります。ここからは介護職に良くある失敗を5つ紹介します。
ベッド柵を設置し忘れた
利用者の移乗やオムツ交換後、ベッド柵の設置を忘れてしまう場合があります。ミスにより、ベッドからの転落事故が発生する危険性は高まります。
介助が終わった後は、必ず最終チェックを怠らないようにしましょう。手差し確認もおすすめです。「最終確認する癖をつける」工夫が、ミスを未然に防ぐポイントです。
利用者がひとりで外出しようとした
認知症がある利用者の場合、介護施設に入所していてもなぜこの場所にいるのかわからず、外出しようとする場合があります。認知症専用のフロアなどは内側から出られないようにロックされている場合は多いですが、自由に出られる施設もあります。
利用者によっては「家に帰りたいんだけど」と介護職に声をかけてくる場合がありますが、わからないように無言でドアを開けようとする場合もあり注意が必要です。ドアに鈴をつけたりセンサーを設置したりも有効な対策です。
車いすのロックをし忘れた
移乗介助の際、車いすにロックがかかっているか必ず確認しましょう。移乗介助で車いすのロックを忘れると、利用者が車いすに移った際に動き出し、転倒の危険があります。
筆者もかつてこのミスを目撃しましたが、幸運にも事故にはいたりませんでした。どんなに慣れていても、基本的な確認作業を怠らない姿勢が大切です。
夜勤中の仮眠で寝過ごした
介護施設では24時間体制でケアを提供するため、夜勤は避けて通れない勤務形態です。筆者が施設勤務をしていたころにした失敗談を紹介します。
夜勤の際、深夜2時から4時までの2時間、交代で仮眠をとる予定になっていました。その日はとくに疲れており、深く眠ってしまいました。目覚まし時計をセットしていたにもかかわらず、気づいたときにはすでに朝の5時を回っていたのです。
この間、同僚はひとりでフロアの見回りや緊急コールへの対応をおこなわなければならず、大変な負担をかけてしまいました。さいわい大きな問題は発生しませんでしたが、利用者の安全に関わる可能性のある重大なミスでした。
複数の目覚まし時計を使用したり、同僚に声をかけてもらったりと対策が必要です。
誤飲させてしまった
食事介助時には、利用者の体調を十分に確認し、適切な形態の食事を提供しましょう。
食事介助時、利用者の体調を確認せずに誤飲を引き起こした場面に遭遇した経験があります。すぐに対処できましたが、重大な事故につながる可能性がありました。食事前には利用者の様子を観察し、食事中も嚥下状態を良く見るとリスクを最小限に抑えられます。
介護職の失敗エピソード|コミュニケーション編
介護の現場では、利用者や家族、同僚とのコミュニケーションが重要です。言葉の選び方やタイミング次第で、大きな誤解や問題が生じるケースもあります。以下にいくつかの例を挙げます。
利用者の名前を間違えた
筆者が利用者に声をかけた際の失敗談です。忙しい業務の中で、うっかり利用者の名前を間違えて呼んでしまったミスがありました。利用者の方は笑って許してくださいましたが、とても申しわけない気持ちになったのを覚えています。
同じような氏名の場合はとくに注意が必要です。呼ぶ前には、一度心の中で確認する習慣をつけましょう。
利用者の話を真に受けてしまった
利用者から日常の話や不満を聞く場合はありますが、必ずしも事実でない場合もあります。
- 孫に早くデイサービスに行けと言われて悲しかった
- 息子に自分の部屋から出てくるなと言われた
- 夫に叩かれた
話の内容を真に受けると虐待されているのではと不安な気持ちになります。話を慎重に受け止め状況を正確に把握するためにも、ほかのスタッフへの確認が必要です。
適切な言葉選びができなかった
利用者には尊厳のある対応を求められますが、フレンドリーな対応をとってしまう介護職も見られます。利用者を呼ぶ際に「○○ちゃん」などと友達に話しかけるように対応する場合です。
喪中にお正月の挨拶をしてしまった
利用者の家族状況を十分に把握せずに、喪中の方にお正月の挨拶をしてしまったケースもありました。
利用者の家族が病気で亡くなり、お正月後に初めてデイサービスを利用した日です。朝、デイサービスのスタッフが迎えに行った際に、「あけましておめでとうございます」と言ってしまったため、「何がめでたいんだ」と利用者が激怒しました。家族の方に指摘されて初めて気づき、深くお詫びする事態となったそうです。
亡くなった事情を知っていたスタッフもおり、利用者と家族の状況をしっかりと理解し、重要な情報は常に共有しなければならないと考えた事例でした。
介護職の失敗エピソード|新人編
介護の仕事を始めたばかりの新人は、やる気と緊張の中でさまざまな経験をします。理論での学びと実践の間にはギャップがあり、戸惑う場面も少なくありません。ここでは、新人介護職が良く経験する失敗エピソードをいくつか紹介します。
尿取りパッドの裏表を間違えた
オムツ交換時には、尿取りパッドを使用する場合が多いです。新人がオムツ交換をした際に、尿取りパッドの裏表を間違えて使用してしまい、利用者に不快な思いをさせてしまった場面を見ました。吸収面が逆になっていたため、尿取りパッドが適切に機能せず、利用者の衣服を濡らしてしまう結果となりました。
急いでいる場合や居室が暗い場合は間違えやすいので、注意しましょう。
洋服の着る順番を間違えた
利用者によっては寒さを感じやすく、多くの洋服を重ね着する方も少なくありません。一度洋服を脱いでしまうと、どの順番で着るべきかがわからなくなってしまう状況は良くあります。寒さ対策で、長袖を着た上に半袖を重ねる方もいれば、ダウンベストを重ね着する方もいます。
本人に確認しても順番がわからないケースも多いです。その際は介護職の判断になりますが、誤った順番で着せてしまうと利用者が不快に感じる場合もあります。洋服の着る順番は、利用者の快適さや安心感に直結するため、細心の注意が必要です。
順番がわからなくなった場合は、先輩や同僚に相談するのが良いです。ひとりで悩まずチームで対応すると、より適切なケアが実現できます。
移乗でふらついた
新人の場合は、まだ移乗介助に慣れていない場合も多いです。自分より身体の大きな利用者や下肢筋力が低下している方の場合、バランスを崩しやすくなります。
移乗介助でふらつき転倒すると、利用者だけでなく自分自身もけがをする可能性があります。不安な場合は、同僚に手伝ってもらうようにしましょう。
利用者が感情的になり対応方法がわからなくなった
利用者が混乱して感情的になっている場合、どのような対応をすれば良いのか迷う場合があります。新人の場合、経験不足は否めないため不安になってしまう場合も多いです。声をかけただけで怒鳴られるケースもあります。
プライバシーに配慮できなかった
利用者のプライバシーへの配慮は必須であり、介護の基本と言っても良いです。しかし、介護職として忙しい業務の中で、配慮が足りなくなる場面もあります。
入浴後に洋服を着てもらおうと介助しようとしたら、隣の利用者に呼ばれてしまい、上半身を裸にしたままその場から離れてしまう場面を見たことがあります。利用者の側から離れる場合は。肩にバスタオルをかけるなどしてなるべく露出しないように対処しましょう。
介護職の失敗を前向きに変えるコツ
失敗は誰にでも起こりますが、前向きにとらえ成長に繋げるには次のステップが重要です。
失敗を振り返る
失敗した状況を客観的に分析し、何が原因だったのか考えます。
- 失敗の状況を詳細に書き出す
- なぜそのような行動をとったのか、自分の思考過程を振り返る
- 結果として何が起こったのか、どのような影響があったのかを整理する
- 同じ失敗を繰り返さないために、どのような対策が必要か考える
フィードバックを求める
先輩や上司に相談し、アドバイスをもらいましょう。自分では気づかなかった新たな視点を得ると、失敗を改善するヒントが見つかる場合はあります。
先輩や上司は、同じような失敗をしてきた可能性があるため、どのように克服したのか尋ねてみても良いです。周囲にアドバイスを求めると、成長への第一歩となります。
研修会や勉強会に参加する
新しい知識や技術を学び続ける姿勢も欠かせません。事業所内の研修会や外部の勉強会に積極的に参加し、スキルアップを図りましょう。学び続けると失敗が減り、自信を持ってケアを提供できるようになります。
参加者は同じような立場の介護職である場合が多いです。不安や悩みなど他者との情報共有をすると、視野も広がります。
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失敗から学び介護職で成長するには対策が必要
介護職では失敗を経験する場合もありますが、成長の糧にする姿勢が大切です。ミスを振り返りフィードバックを求め、学び続けると次に同じ失敗を繰り返さないための準備ができます。
もし失敗により職場での居心地が悪くなってしまった場合は、介護職に特化した派遣サービス「ホップ」を利用して、新しい環境で再スタートを切るのもひとつの方法です。